3ヶ月目

スペインでの生活も漸く3ヶ月が過ぎた。この3ヶ月、もしくは90日というのは何かの節目に良く用いられる期間である。どこの国でも似たり寄ったりだとは思うが、赴任地での生活を立ち上げるにあたっては役所や拠点内における諸々の手続きを始めとし、銀行口座の開設、住居の確定と公共設備の契約、生活必需品の整備等々が必要である。3ヶ月を過ぎる頃には地域の環境や習慣等も僅かながら見えて、漸く生活が一段落してくる。

このような中で同時に仕事を立ち上げていく訳であるが、業務や普段の生活の中で重要となるのが言葉である。私にとってスペインは二度目の駐在とはいえ、フィフティの峠を通過した脳細胞では新しい単語や文法等を詰込むのは容易ではない。日本語の新しい言葉でさえ直ぐに忘れてしまうケースが多々あるのに、外国語ではいささか無理があろうと自分で慰めながらも、発音は日本語と似ているので気にはせず、少々文法が不適当でもジェスチャーを交えなんとか通じ合おうと、西和・和西に加え、西英・英西辞書等をも睨みながら奮闘している。

ご存知の方もいるかと思うが、スペイン語やフランス語では “H” を発音しない。“ha” は“ア”、“he”は”エ”と発音する。その昔、アラブ人が建立した “Alhambra” という有名な宮殿がスペイン南部にあるが、この綴りは、 “アランブラ” と読む。日本語では “h” を意識してか、一般的に “アルハンブラ” と呼ばれている。アルハンブラ宮殿はマドリッドの南方約500Km、グラナダ県を横切る本家シェラネバダ山脈を背に位置し、そこには軽快なベーストーンに美しい三連譜でギターが奏でる【アルハンブラの想い出】という有名な曲がある。

スペインでギターといえば、フラメンコも思い出される。エキゾチックで中近東的な音の旋律とジプシー民族のドゥエンディ (魂) が宿った超情熱的・魔界精神的なリズムと歌、そして踊り。時に激しくも物悲しくせつないフラメンコは、遠い異空間で東北・津軽地方の三味線や民謡の節回しに合い通じているような。。何故か日本人がフラメンコに魅かれるのは、音の世界で不思議な共鳴感を憶えるから、と感じているのは私だけであろうか?

生活も立ち上がり、いよいよこれからフラメンコ文化の世界へのめり込もうと触手を伸ばし始めたところである。


アマポーラの道標 

inserted by FC2 system