緊急入院

閏年の2月29日の一日前、つまり2月28日土曜日のことである。朝、少々早めに起床し、とはいっても8時ではあるが、先般託送頂いたビデオコピーのNHKラジオ体操第二に合わせ先ずは体をほぐした。このラジオ体操は毎朝、日課になっており勿論、通勤の日にも毎朝かかさず行っており、かれこれ1ヶ月以上が経過する。

この日、体操をしているときに少し右下腹に痛みが走るような気がした、が敢えてそう気にもせず引き続き、第一回目の洗濯をし衣類を干すまでに至った。続いて、第二回目の時は洗濯機を回したまま買出しに出ることとした。今日は Majadahonda という街にある Caprabo というスーパーを目指し、久々にステーキやら生野菜、ハム、チーズ、それから私の好物の一つ Brandy Osborne Magno 等を買い漁り、家に帰ってきた。

買い漁った買い物袋を地下駐車場から運び、エレベータに乗り自分の部屋までたどり着いた迄は良かったが、ラジオ体操の時に右下腹に痛みがあったのをこのとき、またもや憶えた。とりあえず買った物を冷蔵庫にしまい、第二回目の洗濯物も干すなどの整理をしたが、どうも下腹の痛みが気になり出してきた。手で右下腹を触ってみると何か “プクリ” と膨らんでいる。前にも似たような症状があったが、下腹を擦っていたら元の状態に戻り、時間経過とともに回復に至った。この時も同様な症状であろうと安易にそのように考えていたが、そうは問屋が卸さなかった。

これは、きっと腸の具合が大変よろしくない状況であろうと判断し、後頭部を床に付け腰をソファーに載せ、ニュートンの法則の助けを借りながら、恐らく腹壁から飛び出たであろう腸を少しでもお腹に戻るよう何度もトライしてみた。んが、状況は良くなるどころか、かの “プクリ” は熱を持ち始め硬さを増し、だんだん大きくなってついには茄子ほどの大きさになってきた。それに加え、同時に下腹の痛さも増して脂汗も出てくるではないか。やややっー!、これはきっと一大事に違いない。やっとのことで、パソコンの医学大百科事典を調べてみた。そこにはヘルニアからくる腸閉塞等とある。放って置くと大変危険なそうな。思案してはみたものの、この状況では自分一人で解決できる術も無く、また自分で救急車を呼べてもその先の対応の仕方が大変不安であることから、当地人事部の日本人の方へヘルプを依頼し緊急病院へ直行する羽目となった。トホホの世界である。

病院受付で状況説明をし、軽く診察を受けるや否や直ぐに手術担当医師に診てもらう必要有り、とのことで手術室隣の部屋へ搬送された。若手二人の医師が手動で腸を戻そうとトライしたが失敗、この間、激痛が何回か走ったが痛さは麻痺し始めていた。しばらくして、大師匠が出てきた。しばらく手で触りながら眺め回し、一気にグイっと指圧ごときの治療で見事に腸は腹内に収まり始めた、と同時に急に体の力が抜け楽になってきた。大師匠は “してやったり”、一瞬ニヤリとしたが、私に腹壁の手術を早期に受けるよう警告することを忘れなかった。

アマポーラの道標 

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