季節の食事

 夏休みを利用し、春先に手術を施した部位の点検と少しばかりの家族サービスを兼ね、2週間ほど南行徳の我が家へ里帰りをした。“暑い、暑い” とは聞いていたが、お盆の3日目は雨が降り、その日の気温は20度程度で大変涼しかった。だが、この日以外は流石に蒸し暑い日々の連続であった。

この自然がもたらす暑さも考えようで、これらは日本の風情や食文化には欠かせないものだ、と例年に無く感じたことがあった。つまり、この日本独特の蒸し暑さがあるからこそ、蝉の鳴き声や風鈴の音に耳を傾けながら、かき氷や冷やそうめんなどを美味しく食することができるのである。

ここマドリッドも暑さでは東京に決して引けを取らない。長ーい昼間の “けだるさ” が漂う風情の中に、見事にブレンドされたスープが脳裏をかすめる時がある。それは、トマトを主体に約10種類の野菜と数種の香辛料を混ぜた “ガスパッチョ”(ガチョーンでは無い) と呼ばれる冷製スープである。食欲が無い時にも不思議と体によく吸収され元気が出る (ガスは出ない)。家で作ることはできるが、食する量の割には野菜の種類があまりにも多いので、少々面倒ではある。

季節にあった食を嗜むという思いは、常に自然と人が調和しながら四季折々の食文化を形成してきた両国人々の共通点でもあると感じる。単身赴任の私にとって、食べ物に事欠かないスペインに居住することができ大変幸せであるが、スペインの食事時間帯は他の国と大きく異なることが少々難点ではある。昼食は 14:30 頃に始まりボリュームも多く、夕食は 21:00 頃漸くレストランが店を開く。従って、私の夕食は常に空腹感を伴わず、野菜サラダや一寸したおつまみ等で十分となっている。

未だ残暑抜けきらない季節ではあるが、日の出は確実に遅くなりつつある。朝、ひんやりした冷気が漂う8時少し前、漸く地平線から陽の輪郭が浮き出てくる景色を会社の窓から拝むことができる。


アマポーラの道標
 

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