フェリーぺ皇太子との遭遇

 去る 9月23日 (木)、事務所近くにある少々高級住宅地の一角に位置する、一寸お上品で小奇麗なレストラン Latigaso で昼食 (昼定食15ユーロ: 1,950円) をとっていた時のエピソードである。

 この日も天まで突き抜けるような見事な青空であった。FESA のグルメメンバーとたまには郊外で食事をしよう、ということになり、丁度、打合わせで日本から来られていた某部長を含め、総勢6人で午後2時前頃、レストランの席についた。一皿目は、スペインの代表的なスープであるガスパッチョ、二皿目は鯛の鉄板焼きという極ありふれた注文を終え、皆で談笑しているときであった。

周りが ふっと静かになったような気がした。それもその筈、突然この国のフェリーぺ皇太子が高貴な紳士と二人で現れたのである。勿論、数人のSP (身辺警護) 付きで彼等は冷静、且つ機械的に入口とレストランの隅々を眺め回し、目立たない場所で目を光らせている。この国の王族は、どこかの国の窮屈な宮廷に閉じ込めれられている皇族方とは大きく異なる。彼等はある程度、自由奔放に散策することができ、故に身辺警護のSP達をよく悩ませている、とは聞いていたが、まさか、このような一般のレストランに、しかも我々の直ぐ隣り (約2m左側) の席につくとはビックリ仰天!まさに、“ヒョッコリ” 現れた、という表現がピッタリ当てはまるシチュエーションであった。

勿論、周りで食事をしている人々もビックリさせられたことであろうが、どこにいるの?と席を立って探索したり、指差しや写真撮影、握手を求めたりするような者は皆無で、皇太子の食事の雰囲気を害するような失礼が無いよう、レストランの平静が保たれていた事が大変印象的であった。

食事をしている皇太子をジロジロ見ることはできなかったが、チラリと目にした料理は、巷にあるパンや極普通のローストチキンを召されていたようだ。食後は、大きめなグラスに入ったシャーベットに2本のストローを入れ、高貴な紳士と二人で交互にすすっていたのがなんとも奇妙に見えた。皇太子はこの5月に結婚したばかりである。このお二人、一体どのような関係にあるのだろうか?加えて、隣りの席に陣取っていた明らかに東洋人と判る6名が醸し出していたエキセントリックな雰囲気は、さぞかしこの輝かしい舞台を台無しにしていたかもしれない。恐らく、周りの人々の目には、奇怪な東洋人とのコントラストが思いっきり場を盛り “下げた” ように映っていたことだろう。

“首しめ強盗”、“緊急入院・ヘルニア手術”、“住民訴訟問題” 、“扇風機故障”と、ろくでも無い事が続いていたが、漸く慶福に出会うことができた。これにて私の厄が目出度く払われたことを望む。


アマポーラの道標 

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