帰任準備開始

 9 月も終盤を迎え、スペインの駐在生活は残り1ヶ月となった。人事回りの連絡や引越し等の帰任準備を始めたとろである。私の後任者の出向準備も順調に進んでいる。私事になるが、この駐在期間中、身辺回りでいろいろな出来事が発生した。親族間で早急に処理しなければならない案件等もあり、任期通りで帰任させて頂くこととした。漸く、帰任という二文字が頭に浮かび始めたところだ。

過去 2 回の駐在では家族を率いていたためであろうか、帰任の際は素直に嬉しかった気持ちが記憶に残っている。また、今回の駐在期間中では幾度か一時帰国する機会を得たが、『どうせ直ぐにスペインへ戻れるサ』、という安堵感があった。果たしてこの帰任はどうだろうか。未だ 1 ヶ月も残ってはいるが、この帰任は妙に気分が複雑だ。短期海外出張からの帰国の際にも、成田空港へ到着する少し前から何か不安を覚えることがある。満員電車や大都会の渦の中へ引き戻されていく自分が、まるで蛇蝎がうごめく壷の中へでも吸い込まれていく錯覚に陥るときがある、という表現は少々大袈裟か。

それだけではない。全員似たような東洋人顔、服装も似たり寄ったり、毎日決まりきった方向へ動いてる集団の中へ引きずり込まれていくことに諦めざるを得ない自分に対して嫌悪感を抱きながら、晴れの帰任を迎えるわけである。

いやいや、忘れちゃいけない家族が待っているではないか。ある極東の国の人々に欠けている、家族を大切にいたわる気持ちは海外生活で羨ましくなるほど見てきたではないか。

単身赴任から解放され、再び家族と同じ屋根の下で暮らせる日が近づいていることを素直に喜ぶこととしよう。


September 28, 2006
アマポーラの道標 














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